西播磨、播磨国風土記から続く発酵の道

西播磨を流れる揖保川と千種川。いずれも加古川、市川、夢前川とともに「播磨五川」に数えられています。この2河川は古くから主要な交通・輸送手段として流域住民の生活を支えてきました。そして今、流域は昔ながらの自然を残しつつも、親水施設の整備や市街地化が進むなど多様な姿を見せています。


千種川流域

 ダムのない自然河川として知られ、水は「近畿の名水百選」にも選ばれています。水源は兵庫、岡山、鳥取の3県境に位置する江浪峠(標高1098m)で流域面積は約750㎢、幹川流路延長は約68㎞。宍粟市、佐用町など4市2町を流れ、播磨灘に注ぎます。

 流域は飛鳥時代、聖徳太子に仕えた秦氏一族が開発したといわれています。上流では良質の砂鉄が採取され、江戸時代はたたら製鉄が盛んでした。佐用町から下流の赤穂市までは高瀬舟で結ばれ、鉄や塩といった特産品のほか、生活物資の主な運輸手段として活用されました。

 千種川流域には中世山城も多く点在し、西国からの要所であったことが伺えます。

 中・上流域周辺では、山菜狩りやキャンプ、登山、スキーなど四季折々の自然を漫喫できます。高速道路からのアクセスも良く、兵庫県内でも有数のアユ釣り場として京阪神から多くの釣り客が訪れます。

 下流の赤穂市では、縄文・弥生時代の遺跡が多数発見されているほか、赤穂義士にまつわる史跡が点在しています。

(千種川)


揖保川流域

 揖保川流域には、日本酒発祥の地である庭田神社があります。播磨国風土記には「庭音の村(本の名は庭酒なり)。大神の御粮、枯れて、かび生えき。すなはち、酒を醸さしめて、庭酒に献りて、宴しき。」と記述があります。これが麹・水を用いた酒造りの製法として現在の日本酒に通じる最古の記述と言われており、宍粟市が日本酒発祥の地であると言われる所以となっています。

龍野は、うすくち醤油の産地。1580年代頃から醤油が作られたという歴史があり、これらは揖保川の豊かな水、播州小麦、三日月大豆、赤穂の塩、米(麹)があったからです。

また、名物「そうめん」は、1418年の斑鳩寺(揖保郡太子町)の文献の中に出てきており、古くから作られていたことが分かります。これらも播州小麦、赤穂の塩、水があったからこそで、樽の中で熟成されたそうめんは「揖保乃糸」として日本三大そうめんの1つとされています。このように、醤油、そうめん、日本酒造りに欠かせない「樽」は揖保川上流の上質な木材があればこそでした。

これらの揖保川流域の特産物は、下流の網干から全国へと流通し、廻船業の加藤家や山本家の豪商が現れ、独自の文化を築いたのです。

(揖保川)

まるっと西播磨ストーリー

兵庫県西播磨地域(相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町)の魅力あふれるストーリーを紹介いたします。

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