うすくち醤油

肥沃な大地と豊かな水源、適度な寒暖差のある気候――。西播磨地域は豊かな自然に恵まれているのに加え、先人のたゆまぬ努力で発酵文化を発展させていきました。日本酒発祥の地・宍粟市の南に位置するたつの市も同じ。醤油と素麺の全国屈指の生産地です。

龍野地域の中央を流れる揖保川の水質(軟水で鉄分が少ない)が醸造に適している、播州平野で産出される良質の大豆、小麦、米と赤穂の塩など主原料が簡単に入手できたことが、たつの市が醤油と素麺の産地となった主な理由として挙げられます。

 日本の醤油の起源は鎌倉時代にさかのぼり、禅僧が中国・宋で製法を学んだとされています。禅僧は帰国後、龍野にも醤油造りを伝えたとあります。本格的に醤油製造が始まったのは、1587(天正15)年と言われています。

最初は一般的な濃口を作っていましたが、1666(寛文6)年、淡口が開発されました。濃口に、全国でも稀なほど鉄分が少ない揖保川の水と甘酒を加えたことにより誕生しました。1672(寛文12)年、龍野城主の脇坂安政がこれを「国産第一之品」として保護。揖保川を使った舟便(高瀬舟)で網干港から大阪や京都など一大消費地に運ぶ輸送ルートを確保し、藩の主要産物として製造が奨励されました。

淡口醤油は色が薄く、味が濃いのが特徴。大阪や京都など関西圏の食文化は野菜や魚、肉の本来の色や味を引き出すことに価値を見出すため、色が薄く小量でしっかり味が付く淡口は、必要不可欠な調味料として重宝されたのです。

 明治時代には、醤油業界も工業化が進み、龍野醤油醸造組合が発足。品質の安定と大量生産化など時代の要請に対応すべく進化を続けました。太平洋戦争時には、製造中止に追い込まれそうになりながらも、関西方面の根強い支持に支えられて危機を回避。戦後、本格的に製造を再開して以降、淡口醤油はますます私たちの食文化に欠かせない調味料として食卓を彩っています。


龍野の町並み

 たつの市の中心部・龍野地区は江戸時代から昭和までの約250年間の町並みを良く残し、東西約560m、南北約850m、15.9haに及ぶ地区は2019(令和元)年12月、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれました。門の外、上霞城、上川原、下川原など八つの地域に分けられ、町家などが立ち並ぶなどそれぞれに特徴を持っています。


醤油まんじゅう

醤油を取り入れた和菓子「醤油まんじゅう」も名物の一つです。皮に醤油をしみこませています。口にすると、醤油のしょっぱさと中の餡(あん)のほのかな甘みが広がり、優しい味を演出します。淡口醤油にちなんだ薄紅色の練り羊羹(ようかん)もお土産にぜひ。



うすくち龍野醤油資料館

国の「重要伝統的建造物群保存地区」内に位置し、モダンな西洋風の外観がレトロ感を醸し出しています。1932(昭和7)年に建てられた元ヒガシマル醤油本社社屋を活用、1979(昭和54)年に開館しました。建物は2008年(平成20年)、国登録有形文化財になりました。江戸時代から醤油醸造に使った用具など約2400点を展示しています。



住所 たつの市龍野町大手54‐1
電話番号 0791‐63‐4573
開館時間 9~17時
休館日 月曜日(祝日と重なった場合は翌日)、年末年始
入館料 10円
駐車場 あり


醤油の郷 大正ロマン館

明治13年に発足した龍野醤油醸造組合が、大正12年に龍野醤油同業組合となり、翌年に建てた「旧龍野醤油同業組合事務所」は大正ロマンを感じさせる当時の面影を残したモダンな洋館で、周辺の観光案内や醤油製造にまつわる資料などを展示。醸造工場跡地は、現在リノベーションされ「クラテラスたつの」となり、建物内には地産地消カフェや地場産品ショップ、ワークショップスペースがあります。いずれの建物も国の登録有形文化財に指定されています。


住所 たつの市龍野町上霞城126
電話番号 0791‐72‐8871
開館時間 10~17時
休館日 月曜日(祝日と重なった場合は翌日)、年末年始、その他 臨時休館あり
入館料 無料
駐車場 あり


▼訪れたい山城

 龍野古城 

15世紀終わりごろに播磨の国一帯を支配していた赤松氏の一族赤松村秀により、鶏籠山頂に築城されたとされる山城です。以後、政秀、広貞、広秀と赤松氏の居城として使われますが、羽柴秀吉による播磨攻略の際に落城しています。標高200m余りの山頂に、城の要となる本丸が築かれ、本丸の側には、守護神八幡宮が建てられていました。さらに、本丸より南の小高い部分には、二の丸が築かれていました。野面積みの石垣や土塁が今も残っており、中世山城の雰囲気を味わうことができます。

(西播磨遊記より https://www.nishiharima.jp/spot/3575)

 

まるっと西播磨ストーリー

兵庫県西播磨地域(相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町)の魅力あふれるストーリーを紹介いたします。

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