そうめん

〈門干し工程で行われる手さばき作業。そうめんが付かないようハシ2本でさばく。〉
 提供 兵庫県手延素麺協同組合


 日本酒、醤油と西播磨の発酵文化を訪ねる旅の締めくくりは、全国ブランド「揖保乃糸」で知られる手延べそうめんです。我が国のそうめんの起源は、約1300年前の奈良時代。遣唐使が中国から持ち帰った「唐菓子(からかし)」の一種である「索餅(さくべい)」が、その原型と言われています。小麦粉と米粉を水で練って延ばした生地を乾燥させたものです。


 播州で、そうめんに触れた最も古い文献は、斑鳩寺(揖保郡太子町)に残る寺院日記「鵤庄引付(いかるがのしょうひきつけ)」(県重要文化財)です。室町時代の1418(応永25)年9月18日の条に「サウメン」、1433(永享5)年には初めて「素麺」の文字を見ることができます。形状は、すでに今のような麺状になっていたそうですが、中世までは宮中や寺院などで特別な宴のときに供されていました。


 そうめんづくりが本格的になったのは江戸時代の安永年間(1772~1781年)とされ、当時の龍野播磨藩が「許可業種」として製造を奨励。この頃、ようやく庶民の食卓にものぼるようになりました。冬に雨の少ない瀬戸内気候、鉄分の少ない水質で白い麺を生み出す揖保川、厳選された小麦粉に赤穂の良質な塩。こうした自然の恵みこそが、約600年の歴史を持つ播州のそうめんづくりを支えているのです。


手延そうめん「揖保乃糸」

 1887(明治20)年に兵庫県手延素麺協同組合の前身となる播磨国揖東西両郡素麺営業組合が設立され、1894(明治27)年、組合員が製造する統一商標として「揖保乃糸」が誕生。厳しい品質管理と技術の伝承・向上でブランド力をしっかりと守っています。兵庫県手延素麺協同組合には2020(令和2)年8月現在、約410軒が加盟し、年間に約2万トンを生産。全国の手延べそうめんの約4割を占め、日本一の生産量を誇ります。



揖保乃糸 資料館 そうめんの里

〈館内では、昔ながらのそうめんづくりも学べる。〉 =提供 兵庫県手延素麺協同組合


 手延べそうめんの歴史や伝統の技を知り、体験する施設。1997(平成9)年4月にオープンし、2018(平成30)年5月に、来館者250万人を達成しました。鉄筋4階建てで、1階が実演、試食(いずれも体験希望者は事前に「そうめんの里」に問い合わせを)、お土産の各コーナー。2階は展示室になっており、そうめんの歴史と文化をパネルで解説したり、昔ながらの作業風景を等身大の人形で紹介したり。そうめんを6把ずつ自動で包装する加工場も見学できます。

住所 たつの市神岡町奥村56

1階売店、2階展示室 9:00~17:00(展示室への入館は16:30最終)
休館日 毎週月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料 大人300円 中・高校生200円 小人100円

駐車場 大型バス12台、乗用車70台

☎ 0791‐65‐9000

お食事処 庵(いおり)

 そうめんの里の1階にあるレストラン。テーブル席と座敷合わせて約150席あります。定番のメニューはもちろん、結婚式の祝宴の最後に出される料理をアレンジした「鯛そうめん」のほか、ここでしか食べることができない、そうめんを使った創作料理も。夏場は「そうめん流し」が楽しめます。

11:00~21:00(20:00ラストオーダー)


野菜あんかけ・そうめん巻寿司

 野菜あんかけは「そうめんの里でしか食べられない」ということもあってか、一番人気を誇ります。パリっと揚げたそうめんが独特の歯ごたえで、あんかけの粘りがいいアクセントに。そこにチンゲン菜、しいたけ、たまねぎ、豚肉などの具材がのっています。ボリューム感たっぷりで、女性ならお友達とシェアしてもらっても食べごたえ十分だとか。900円(税込み)。

 そうめん巻寿司は酢飯の代わりに、4分ほど酢に漬けたそうめんを海苔で巻き、一口サイズに切っているので食べやすく、あっさりした味わいが魅力。物珍しさもあって、よく注文されます。440円(同)。

〈野菜あんかけ〉 


〈そうめん巻寿司〉



素麵神社

 正式には大神(おおみわ)神社といい、日本最古の神社の一つとされる大神神社(奈良県桜井市)の御札を授かり、1899(明治32)年、たつの市神岡町大住寺の塩盛山に本殿などを建立。当時の春の例祭では、商売繁盛を祈るそうめん製造業者らで大いににぎわい、そうめんづくりの技などを競う競技大会も開かれました。老朽化によって平成の大改修に着手。2004(平成16)年4月に竣工しました。

味噌

西播磨の発酵食品といえば、ほかに味噌があります。揖保郡太子町産の米や大豆、赤穂の塩を使った「太子みそ」は、麹(こうじ)を多めに使った豊かな香りと絶妙な甘みが特徴。10か月間熟成させ、大豆の旨味も引き出しています。一時は作り手が少なくなり、“幻の味噌”ともいわれましたが、町の特産品化を目指す機運が高まって、地元のお母さんたちが集まり復活。次第に普及し、2015(平成27)年に太子加工合同会社に法人化しました。今では、スーパーやコンビニでも販売され、地元・太子町では学校給食にも出されるまでに。町内のお店では、「播欧菓(みそマドレーヌ)」や「太子みそ煮込みうどん」など新たな商品も生まれています。


〈太子加工合同会社のみなさん〉

まるっと西播磨ストーリー

兵庫県西播磨地域(相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町)の魅力あふれるストーリーを紹介いたします。

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